「須藤、
被害者の身元の方は
どないや?」
佐々木は捜査報告を
整理しながら
訊いた。



「おい、立花」
須藤はそれを
立花にふった。



立花は詳細を
書いた報告書を
佐々木に渡した。
「神楽で聴取した詳細は、
こちらに纏めてあります」


「家族との連絡は?」


「連絡はついてます。
今、所轄が迎えに
行ってるので、
もうすぐ着くと思います」



「そうか…
ほな到着後、
遺体確認と
家族からの聴取を、
二人でしてくれるか」

佐々木の指示に、
須藤と立花は頷いた。



被害者家族が
到着するまでの間、
須藤と立花は
まだ目を通していない
捜査資料を確認した。



立花はポケットから
リップクリームを
取り出し、
唇にあてた。



「立花…
口紅は薄くしとけ…」
じっと手元に目をやった
須藤に、立花は微笑んだ。



「須藤さん…
これはリップクリームです。
それに濃い化粧をしてる
とこ見たことありますか?」
須藤は気まずそうに
目をそらした。



四十五歳の須藤と
二十五歳の立花は、
時折親子のような
会話をする。


二人が組むように
なって半年、
立花は須藤を慕い
須藤も立花を
可愛がっている。



「須藤さん、
まだ被害者の
所持品は見つかって
ないみたいですね。
今の段階では、
物取りの線が
濃厚ですかね?」


「いや…立花、
そうとも限らんで…」
須藤は資料を
見せながら話しを
進めた。