立花はどこか名残惜しい
想いになりながらも、
鉢植えを
鑑識に渡した。



「おい、被害者の
身元わかったで」
佐々木が手帳を手に、
須藤と立花に歩み寄ってきた。
二人は素早く手帳を
取り出し、
控えをとった。



現場には、被害者の
身元を確認できる
所持品は無かった。
恐らく犯人が、
持ち去ったのだろう。
そのため今ある情報は、
第一発見者の女性からの、
ものしかなかった。


被害者の名前は、茅原智也。
年齢は二十歳。
現場近くの商店街にある、
居酒屋神楽の
アルバイト店員をしている。
被害者宅の住所や、
電話番号は、
今のところ不明だった。



須藤は気になる点を、
佐々木に訊いた。
「アルバイト先が
わかるのに、
住所などは不明ですか?
第一発見者と
被害者との関係は?」


須藤の問いに、
佐々木はやりきれない
表情を浮かべながら、
答えた。
「第一発見者の加藤亜沙美
は、被害者の恋人や。
今日もこの公園で、
待ち合わせていたらしい。
被害者宅へは
行った事もないし、
電話番号も知らんみたいや。
今時の子は、携帯電話しか
しらんゆうんも
多いみたいやな」



佐々木の話を
訊きながら、
立花は唇を噛みしめていた。