「課長。遅くなりました」
須藤は軽く頭を下げ、
捜査員達の輪に混じる。


「すみません。
遅くなりました」
立花は頭を深く下げ、
須藤に続いた。


佐々木は二人の顔を見ながら、「ご苦労さん」と言った。



輪に加わった須藤が、
まず目に留めたのは、
ベンチの前に掛けられた、
ブルーシートだった。


シート上にも、
少し雪が積もっている。


佐々木の合図で、
警察官がシートを捲った。



「他殺で間違いないやろ」
佐々木の言葉に、
須藤は頷いた。


「死因は?」
須藤の問に、
佐々木は遺体の腹部を
指差して答えた。


「腹部にある傷や。
検視の結果、
大動脈の損傷による
失血死とのことや。
傷が深く、
ほぼ即死やったろうと…」



須藤は遺体の顔を
見ながら、呟いた。
「そうですか。
長く苦しめへんかったのが、
せめてもの救いやな」



須藤は遺体の
傍らにしゃがみ、
合掌し目を閉じた。


立花も青い顔をしながら、
須藤に倣った。