ねぇ 聞いてる?ねぇ、










そう言った友人の声で
あたしは現実に戻った









どうしたの?なんかぼーっとしてるよ


















ぼーっと‥?



そっか あたしぼーってしてたんだ



あれいつの頃のことだったかな



記憶に薄いヴェールがかかったみたいに
あの夏のことをあまり鮮明に思い出せない












どうした
恋でもしたの?












恋か‥
もぅ何年やってなかったのかな



いや 恋するつもりなんて
なかったけど‥






だけど






彼を見つけてしまった



彼の笑顔の理由になれたら
どれだけ幸せなんだろう



その隣で笑い合うことが出来たのなら
世界は変わって見えるのかな



なんてまた空想の世界に
行ってしまいそうになる






恋なんてしない



そう決めたはずなのに‥






自分の心がよくわからない




なんて考えていたあたしに









またどんな人か教えてね〜



なんてのんきなことを言いながら
自分の席に戻っていく友人



気が付けば始業のベルの1分前












また始まる退屈な授業
次の授業中にグランドを覗いてみても
彼はいるはずないけど



それでも もしかしたら



なんていうバカな考えが
あたしの中によぎる












ベルも鳴りグランドでは
やはりサッカーをやっていた



楽しそうな笑い声がまた聞こえる






あるはずのない彼の面影を探しては
やはり彼はいないと悟り
少しがっかりするあたしの心















そうして1時間 また1時間が過ぎて
放課後になるのをあたしは待っていた