搬送先の病院の入り口で、孝之が待ってくれていた。


「響子、取り乱すなよ。」


まだ現実味が無くて、心臓が潰れそうなくらい痛い。


トオルがいるの?


この無機質な廊下の先に…


涙はいつの間にやら乾いてて、素肌に戻ってた。


霊安室


その三文字が見えた途端に、あたしの中の『現実』が動き出した。


「タカちゃん


トオルくん…本当に死んだの…??」


なんて滑稽な質問なんだろ。


でも、これしか出なかった。


「うん。本当に…」

「さっきね、電話で`またね´って言ってたよ?」

「…うん」

「こんな部屋…トオルくん嫌がるじゃん」

「…響子」

「いないよ!!あたし自分の目で確かめるから!!どいて!!」


中に入れようとさせない孝之の手を振り切って、霊安室のドアを開けた。