「ちゃんと授業の用意しておけよ」
先生がそう言って教室から出て行くと……

「桜井さんどこから来たの?」

「かわいいー」

いろんな人に囲まれて一斉に話し掛けられた。

正直言ってうざい。

私は逃げるように教室から出て行くと春樹のいるクラスに行った。
「春樹」

「星玻じゃん。どうしたのー?」

「うざいから逃げて来た」

「そんな事だと思ったよ」

春樹はクスッと笑ってそう言った。

「屋上行きたい。連れて行け」

「はいはい。わかりましたよお嬢様」

春樹はこうしてよくからかってくる。

本心で言ってる訳じゃないってわかってるし、いちいち反応するのも面倒だからスルーする。

「お前高いとこ好きだよなぁ」

「うん」

屋上へと続く薄暗い階段を登りながらそんな会話をしていた。

なぜか春樹と話していると心が落ち着く気がする。

春樹は自分以外に心を許せる人を探せと言うけど…

見つけられたら苦労してないよと春樹の背中に呟いてみた。

まぁそのうち見つければいっか。
めんどくさい…

「今めんどくさいって思ってるでしょ」

「えっ?」

「あはは。図星だ」

まさか私が思ってる事がわかるなんて思わなかった。

正直ちょっと焦った……。

今までも私が考えてる事がわかったりしてたんだろうか…。

「着いたよ」

よいしょと呟いて春樹が重そうな鉄の扉を開けるときれいな青空が広がっていた。

空を見ていると落ち着く気がする。

心が少し軽くなるような感じがする。

「星玻って本当に無口だよな。もっと喋ればいいのに」

「それさっき隣の席の奴にも言われた」

「兄貴いなくなってから全然喋らなくなったよな」

「そんな事ないと思うけど」

兄貴以外にも心開ける奴見つけろよ、と私の頭を軽く叩いて言った。

この時私はまだ知らなかった。

心を開ける人にもう出会っていた事を……。