「見たところ、随分、この舞姫は剣術に長ける様ですな。私に、是非ともお相手を願えませんかな?」

「ならぬ。」

オリビアに向けられた言葉を、ヴァイスは、一蹴した。

楽師達が、何がはじまるのかと、演奏の手をとめる。

華やかな音楽がやんだ広間は、声を潜めたどよめきで満たされていた。

「覇王殿、そんなことをおっしゃらずに・・・」

更に食い下がる男を、ヴァイスはたしなめる。

「ハリス!
オマエの企みなど、既に私は知っている。
アンジェラを利用し、その侍女の弱みを利用した貴様の謀などな。」

ヴァイスのよく通る声が、居合わせた者全ての耳に入り、注目を集める。

疲労から、立っている事もできずに、その場に座り込んでしまったオリビアに、王妃が静かに歩み寄る。

後を追って来た侍女が、王妃に申し付けられ持ってきた大きなクロスを手渡すと、彼女は、それでオリビアの体を覆い、肩を抱いた。

「ハリス、オマエは、火宮王室の王女の暗殺を企てたのだろう?」

王妃が、驚いたように、ヴァイスを・・・息子をみやる。