そんなことを知らぬ本人は、目の前の二人に好奇の視線をおくっていた。


当のオリビアは、表情こそ優雅ではあるが、既に限界に近づき始めていた。

刺客と戦うような、力任せの闘いではないだけに、思ったより体力を消耗する。

重い剣を振り回し、舞続けること、三刻ほどとなり、腕がしびれ、今にも剣を落としそうになっていた。

それでも、なんとか、体の中心を狙う攻撃を全身の力でとめるが、振り払う力は、もうなかった。


ヴァイスにも
それは伝わっており
比較的、受け身に力のいらない攻撃を、繰り返すに留まっていた。


「お待ちください!」 

ディックの慌てた声と共に、来賓席よりざわめきが起こる。

一人の貴族が、長剣を抜き、舞台へ進みでる。

「オマリー=ハリス伯爵!」

再び、ディックの制止を促す声がした。

「覇王殿、私にも参加させていただけませんか?」

剣を交える二人に向かい、ハリスは愉快そうにいう。

「オリビア。」

ヴァイスは、目で中断の合図をおくる。