ヴァイスは、オリビアの動きを把握するためにも、その姿を見つめる。

彼女は、歌声にあわせ、剣先の方向を変えながら、しなやかに肢体を動かす。

しなやかな筋肉でありながらも、男性的な雰囲気をみせる。

自分にだけに繰り出される舞に目を奪われかけた刹那、オリビアの剣が、覇王の右上腕を鋭く突きこむ。

咄嗟に身体を左へかわして、剣を握りなおした。

剣先は、更に、上下左右と、前後へとあらゆる方向を狙い振り下ろされる。

彼は、剣の腹部で攻撃を止めながらも感心する。

舞でありつつも、攻撃性を兼ね揃えている。

今まで、何度も改良されて伝承されていたのだろう。

彼女の剣を振り払うため、ヴァイスも軸を狙い攻撃するが、驚くべき事に、今回、初めて剣を手にしたはずが、なかなか見事な防御をみせる。

長年、自分の剣の相手を務めて来たディックの動きを、短時間で真似るとは・・・。

ディックも来賓側の席より観覧し、その運動神経に驚いていた。
さりげなく、ハリス伯爵の表情を盗み見れば、血に飢えた獣のようで、嫌悪感を抱く。