ディックの深いため息と共に零れ落ちる愚痴を、苦笑混じりできいていた。


そういえば


いつも、真っ先に、怒り心頭で爆発するアンジェラが来る気配がない。

おかしなものだ。

来ると、欝とうしいのに、来なければ、変わりがあったのかと訝しむ。


「珍しいな。
アンジェラが来ないとは。」


思わずつぶやいた言葉に、ディックの眼が一瞬、陰った。


なにかあったなーーーー


確信の元、言葉を探しているらしき、右腕である男に問う。

「何があった?」


自分の声に、奴は、
思いのほか、ストレートな言葉で
語りはじめる。

「姫君が・・・・
成人の儀の祝賀に、
神事を望まれました。」

ヴァイスは、ひじ掛けに腕をあずけ、グラスを口元に運びつつ、耳を傾ける。


「内容は?」


「舞踊を・・・ごらんになりたいと。」

「舞踊?」


何だ
そんなことか。

言わんとしそうな、覇王の表情をみて、彼は、簡単な話ではないというように、首を横にふる。


「ただの舞ではありません。」