ヴァイスが、こっそり宮廷を抜け出す事は、珍しくも何ともなかった。

もちろん・・・
毎度、騒動にはなるが。


ディックも側近である以上、相当周囲から詰められるのが予測されるが、どちらにしろ、即位してしまえば、そんな自由が効くはずがなく、ここは、目をつぶってやろうと思っていた。


だが・・・
ちょっとした問題が、勃発してしまい、不在が明るみに出てしまった。

まさか、自分にも行き先を告げずに、一国の王太子が姿を消したなどと、流石にいえず考えあぐねていた。

ディックには、この問題が、このまま収まる様に思えなかったのだ。


行き先を、様々に推測する。

まさか・・・ヴォルハムンにいった訳はないだろう。

さすがに、あの方も
そこまでは・・・・



ヴァイスの馬が、町外れの厩舎に預けられているのを発見したときは、その『まさか』が、おこったと知り、頭を抱えた。


いくら戦神などと、あの方を評する事はあれど、行った事もないのに、一人で砂漠に行くなど、有り得ない・・・。