「オリビアの事よりは、むしろ、アンジェラっていう、姫様のほうが噂になってたな。」


オリビアも噂くらいは聞いた事のある女性だ。

美人で、聡明、思慮深く、親切で優しいかただという、絵に書いたような姫様像だ。

当然、噂の範疇で、宮廷楽師でもなければ、通常、王族なんて人達にお目にかかることはない。

「今度、ご成人になられるそうだ。相変わらず、美しくあるが、最近、あれほど情け深かったお方が、どこか、人を寄せ付けぬ冷酷な印象をお与えになると。」

「一部では、何かに憑かれておられるのでは?といった話も。
また、宗教に深く入信されたとの噂も、陰ながらには。」


二人の話からすれば、オリビアについては、暫く水宮に足を踏み入れなければ、なんてことはないだろうという話であった。

居合わせたものが、安堵のため息をついた。


何もなかったように
時間が解決してくれる。


捕われがちな記憶も、
彼の魅力も・・・


心の奥底に閉ざしてしまえば、以前と変わらぬ生活ができるのだ。


オリビアは、小さく吐息を零した。