ひんやりとした空気が、
紺色の街を包み込む。


宿場街の小路が出合う広場は暗く、酒場の明かりは、その周辺を照らし出すに過ぎなかった。


一軒の店の木戸を、同じ年頃の男二人がくぐる。

「すごい熱気だな。
酒が入ると活力がでるんだな。」

年下の男の方が、相手に言うわけでもなく呟いた。

狭い通路を擦り抜けながら、空いたカウンターの方へ向かう。

すっかり、夜も更けた頃合いにやってきた新しい客人の方へ、程よく酔いの回った客や接客する女達が、一瞥するような、視線をむけたが、やがて何もなかった様に、会話を再開させた。

「あまり、目立つような事はなさらぬ様、願います。
民衆の集う場所ですから。」

連れの男が、口元を手で覆い、小声で注意を促す。

曖昧に返事をしながら、コートを脱ぎ、ハイカウンター仕様の椅子に、並んで腰掛ける。

水宮の中央より離れたこの街は、都に比べると、治安も風紀も良いものではない。

但し、どの王都であっても、国境付近というのは、こういったモノだから、ある程度の事には目をつぶる政策をとっている。