まだ朝日が昇る前の冷たい空気の中、曇ったガラスが小さく音を立てる。


オリビアは朝がきたこと知り、目覚める。

まだまだ、重い体を起こし、出発の身支度を調える。

防寒用の黒いマントを、旅衣の上から羽織り、演舞の衣装の入った道具箱を担いだ。

皮革のブーツの紐がしっかりと縛られてるか、少し足首の角度を変える様に動かして確認する。

さあ・・・いこう。

彼女は、マントのフードを被り、部屋を後にする。


宿の外は、まだ暗闇のままだ。

彼女は、冷たい空気を吸い込み、砂を運んでくる風上に向けて歩き始める。


三日もすれば、ヴォルハムンに辿り着けるだろう。

もう、すっかり、彼女の影すらも、闇は飲み込んでしまっている。


このまま静かに


砂漠に帰れるだろう



何も、無かったように。