国境に一番近い街『サハール』

こんな都から離れた街でも、表通りにいけば、水路がひかれている。

そこには、澄んだ水が導かれており、さすがは、水の精霊が祝福し誕生した土地だと納得する。

視線を先に向ければ、黄色みを帯びた光線の中に、遠く浮かびあがる宮殿がみえる。

『水宮宮殿』

宮廷舞踊や神楽を専門で行うキャラバンの者から、それは美しいところだと聞いたことがある。

でも、そんな話も、砂漠に住まう民のこと、直ぐに宮殿内から街を巡る水の話から、オアシスや、今だ見ぬ海の話へと飛躍して終了したのだが。

噂に聞く美しい白亜の建物がそびえる。

宮廷に興味がサッパリない事も影響してか、それ以上の関心を、彼女は向けようともしなかった。


水流に沿って、街を歩きながら、彼女は、まだ、この街に通い出した頃に、ジャンから聞いた古典を思い出す。

それは、情熱的で激しい恋の話で、この国に伝わる昔話だった。

太古からの歴史を感じて、今宵は、古典舞踊を舞いたい気持ちになる。


鈴がいるな・・・