「これから、どうするつもりをしている?」

ヴァイスが、尋ねる。

「直ぐに、ヴォルハムンへ帰ります。火宮にいったって、私を歓迎する人間はいないでしょうし、第一、政治なんて興味もないですから。」

「そうか・・・
宮廷に入るつもりはないんだな?」

オリビア次第で、そうする事も可能だと、彼は告げる。

「ありません。」

彼女は、きっぱりと断った。

「覇王、ペンをお借りできますか。」

アンジェラの胸中を考えれば、目覚めて自分と顔を合わせるのも心苦しいだろうと、看病の感謝と、望んでくれれば、いつでも古典を舞うといった内容の手紙をかいて、その目覚めも待たず、王宮をあとにした。

翌早朝、サハールから、砂漠に続く石畳を歩く。

霧の中、靴音が響く。


まるで
あの日の様に。


初めて、ヴァイスと言葉を交わした朝の様に。

彼女は宮殿の方向を振り返る。

ここからはよく見えないが、きっと変わらず、白亜の建物が雄大に水をたたえているのだろう。


相手は
一国の王子なんだから・・・