「口之津先生、手早そうだし・・・。ねえ、有明先生」

「いや・・・僕に言われても」

「そうっスよ!こういう男が意外にも女にはだらしなかったりするんだから!」

「ちょっと!有明先生に失礼じゃないですか」

「さっきから理不尽!!」


興奮する二人を有明は「まあまあ」となだめる。


「とにかく俺はまだキスしかしてねーし」

「え・・・それ手出してないって言うんですか・・・・・・?」

「え、言わないかな」

「・・・・・・・・・・・・さあ、僕には・・・」



意外にも口之津と自分が同じだと知り、心が痛い。

小浜は興味津々で口之津を質問責めにするが、その表情は『理解できない』という目だ。


(ああいう反応が普通だよな・・・)


騒ぐ二人をよそに深いため息をつく。



「そういえば有明先生は俺のこと否定しないし『やめろ』とも言いませんよね。
正直、チクるくらいするかと思ってました」

「僕・・・は・・・・・・」


言えるわけがない。


自分も口之津の気持ちがよくわかるだなんて――。




「口之津先生が下心で誰にでも生徒に手を出しているというのなら話は別ですが・・・
そうは見えませんでしたから」


「!」



口之津は真剣な顔をして驚いた。


小浜が「有明先生素敵です」とまたうっとりとした顔をする。




「・・・この親睦会はやっぱ意味があったかな。
俺、ちゃんとお礼しとこうと思ってたんスよ」

「え・・・?」



口之津は有明の方に体を向け、勢いよく頭を下げた。