「初めまして、ローズさん」
可愛い、目がくりっくりだ。
フワフワの髪の毛を二つに結んだ可愛い女の子。
「何が目的?」
サラが私の前に守るように躍り出た。
「リリス・ハウエル!」
ハウエル?
まさかこの子、シルバーの
『遂には妹まで……』
……妹!?
「兄さん、元気?」
ゾクリと悪寒がした。
何この子……。
「知らないんですか?」
コロッと華やかな雰囲気になる。
「必要なし、です」
必要なし?
リリスは右手から黒い、光の玉を出した。
それが私に向かってとんでくる。
「ローズ!」
サラが私を突き飛ばした。
「痛……サラ!?」
羽は真っ黒に染まり、魂のようなものが出ていた。
リリスはそれを取ると身体に取り込んだ。
「サラ!サラ!!」
返事がない。
リリスは髪飾りを置き、兎を呼んだ。
「行くよ、消されるわけには行かないんですから」
─第六章‐再会の時─
サラは深い眠りについたかのように、目を覚まさない。
「サラ、サラ!目を開けて……!
嫌よ、そんなの嘘よ!!」
サラはそれでも目を開けなかった。
そしてサラは光の粒となり、消滅した。
「サ、ラ……」
消えてしまった……。
本当に、居なくなってしまった。
コツっと静かな部屋に響いた。
「お久しぶりですわね」
キッとエクセディを睨む。
「エクセディ……ネックレス!
返して!!」
彼女は私のネックレスをつけていた。
そんなの許せない!!
「嫌ですわ」
しかし、ネックレスはそれに反し、フワッと浮き、私に向かってこようとしていた。
「そうよ、こっちよ!!」
「黙んなさい!!ですわ!」
ギュッとネックレスを握り、阻止をする。
いや、それにしても、“黙んなさいですわ”はないよ。
言葉的におかしいし。
――魔力、解き放たれたり
ネックレスはエクセディの手の中で光出し、エクセディを呑み込んだ。
――速やかに所有者に渡すのだ。
「嫌ですわ!」
――早く!!
それならば力付くでも返すまでだ!
呑まれる!?
そう思った瞬間、声が聞こえた。
――死の制裁を
目を瞑り、もう一度開く。
その時の私の目に光は宿っていなかった。
「殺すのか?」
聞きなれない男の声。
顔を見れば、ニコリと微笑む男がいた。
「貴方は?」
「フィレンツェ・カルタス。
エクセディの兄さ」
「……敵」
私はバッと彼に突進した。
それを回避しようと手を上げたフィレンツェだが、妹の異変に止めた。
「エクセディ……?」
エクセディはそんなの聞こえないかのように自分の手のひらを見つめていた。
嫌な予感がした。
――ローズ、聞こえるかい
この声……。
貴女は
――なに?
まさか、
ローリエ?
――正解。
私はいつもあのネックレスの中にいる。
ハッと意識が現実へと戻る。
目の前には少し焦げた右手を見せるエクセディが。
「何ですの?これ……」
シュウウッと焼けるような音をたてながら彼女の腕へ指先へと焦げは広がり始めた。
「やぁ!!」
ネックレスの当たっている場所も徐々に……。
ポロリと涙を流し、泣き叫んだ。
「嫌アアァァァァ!!」
エクセディが、焦げて行く……。
フィレンツェは止めようと、駆けよった。
「エクセディ!ネックレスを外すんだ!」
フィレンツェがネックレスに手をかける。
しかし、彼は即座に手を離した。
「なんだこの熱さ……」
エクセディへの呪いは止まらない。
「お兄様、ワタクシはこれまでのようですわ」
エクセディはギュッとフィレンツェの手を握る。
そして焦げは遂に彼女の顔まで達した。
「……に…………さ、ま」
そして、彼女は真っ黒になり、死んでしまった。
呆気ない。
こんなにも、呆気ない。
フィレンツェは私を睨んだ。
そして直ぐに何処かへ行ってしまった。
私には、何が起こったのか……。
エクセディの亡骸が消え、ネックレスだけ残る。
熱くない……。
『私はいつもあのネックレスの中にいる』
まさか、ローリエ、貴女が?
ネックレスを取り、髪飾りを拾った。
あ、目眩が……。
視界が歪み、立っていられなくなり、座り込んだ。
――何をしたか、知りたいの?
私は、気づけば見知らぬ空間にいた。
多分、ローリエが創造した世界。
「ローリエ!!」
「そうよ」
姿が、違う。
髪がすごく長くて、私より大人っぽい顔。
でも目の色と、顔のパーツは私と瓜二つ。
「さぁ、始めましょう」
「何、を?」
「大丈夫、ローズに元の力が戻るだけ」
元の力って?
「ローズ、貴女はねとても凄い魔力の持ち主なの。
でもコントロールするのは難しいし、魔力を消さなきゃ人間として平和に暮らすのはまず無理。
だから貴女の母親、エルザがこのネックレスに魔力を移したの。
そして私はその番人みたいなもの」
おば様、が……?
「さぁ、やりましょう……
ローズ・ヘルシオン
我の主と認める。誓いなさい」
ローリエは私に左手を差し出した。
私はそれにそっと口付けをする。
目を開ければ、さっきいた部屋。
特に変わった事はないみたいだけど……
少し体が軽くなった気もする。
私は、テラスへの扉を開け、テラスに出た。
目の前には城下町が広がっていた。
「ローズ、お姉ちゃん?」
え、誰……?
「やっぱりそうだよね?」
銀髪にメッシュ、こんな子、いたっけ?
でも、何処かで……
「フィル?」
「うん」
ズイッと彼は詰め寄ってきた。
見た目的に多分14歳くらいであろう彼は私の身長を優に越していた。
「やっぱり、お姉ちゃん何処かこう……サラに似てる?」
「気のせいよ」
くるりと後ろを向き、また城下町を見下ろす。
迫り来る気配。
まさか……
「フィル?」
「ゴミ、ついてたんだ」
「ありがとう」
今、突き落とそうとした?
パチパチと背後から誰かが拍手する。
「君はスゴいね」
「フィレンツェ!」
「お前誰だよ!!」
「フィレンツェ・カルタス、フィル君覚えておくんだよ」
「フィレンツェ・カルタス、だと?」
私は隙をついて、彼の鳩尾に蹴りをいれた。
「おしとやかに、な?」
相当痛かったみたい。
「フィル!?」
フィレンツェはフィルを力いっぱい突き飛ばした。
そんな……フィルは大丈夫かしら?
「シルバーはいいのかい?」
「いいわけないわ」
「そうこなくっちゃ」
魔法を使うと見せかけて……
「かはっ!!」
また私は彼の鳩尾にグーで思いきりパンチを食らわしてやった。
「お前の、探し、ものは、我が、城に……」
カッコよくいってるつもりだろうけど鳩尾にパンチのせいでカッコ悪い。
ふわりと体が浮く。
「ご招待致しましょう」
何をする気!?
彼も浮き、空高く舞い上がった。
私はお城の前で地面に足をついた。
フィレンツェの、声が聞こえた。
彼が私に話してる訳じゃない。
城から直接、私に語っている。
――この城の中、俺ら兄妹は二人きり
寂しい?言えるわけがない。
仕方がないことだ。
エクセディは、
寂しさからブラコンに
身の拠り所が俺しか無かったから。
そして、性格もまた、彼女は歪んだ。
ポロッと涙が流れた。
辛かったはず。と。
ザシュッと背後から何かを切る音がした。
「番人様、隙にはお気をつけを」
この声は……
「狐……」
「全ては奴の戦略、さぁ、進みましょう」
城の中に足を踏み入れた。