「けど、つい最近見た夢はいつもと違っていました。名前を呼ばれて振り返ったら…」

「俺がいたか?」


落ち着き払った声で告げられた言葉に弾かれたように顔を上げた。




「ッ…何故……」

「知っているさ。確かにあの日あの湖で君の名を呼んだのは間違いなく俺だ」


今度こそ息を飲んで驚きに言葉を失った。

目を見開いてただ見つめる私に、ラファエルは意を決したように話し始めた。





「あの日も君はあの湖でいつものように俺を待っていた」


私が待っていたのはやっぱりラファエル様だった。

私は何故ラファエル様を待っていたの?




ズキッ……―――――

その先を追おうとすると頭に懐かしい痛みが走る。

ズキズキと頭が痛むけれど、まだ肝心なことを聞いていない。




“あの日も”

“いつものように”



それはまだ知らない私の記憶に封じこめられているはずの欠片。

私はそれを知らなければならないような気がする。

それが例えどんな記憶でも…

どんな痛みを伴っても…




「イヴ?」


眉を寄せて頭の痛みをやり過ごそうとしていたが、少しの変化も見逃さないラファエルが心配そうな表情で私の顔を覗きこむ。