「…き…です」


夜の静寂でも消え入りそうな声。

伝えるつもりなんてなかったのに。

虚しさを感じるだけのこの言葉を胸にしまったまま天界へ帰ろうと決めたはず。




「イヴ?」


なのに、貴方の言葉と温かさは私の意志を容易に砕くの…





「ラファエル様のことが…っふ…く……」


優しい声に導かれる様に顔を上げ、まっすぐと合った視線。






「好きです」


口にした瞬間、アメジストの瞳が大きく見開かれる。





「イヴ…俺はその言葉を信じていいのか?」


ラファエルがそう言うのも無理ない。

私に成りすましたアメリアに愛の言葉を囁かれ。

“イヴ”にそっくりの私に告白され。

一体誰の言葉を信じて良いか分からないほどに。

ましてや、さっきまで“イヴ”であることを否定し続けてきた私にだ。

これじゃ私が“イヴ”を利用しているように見えてもおかしくない。

私がしていることはアメリアさんとなんら変わりはない。





けれど――――



「この気持ちは偽りない私の言葉です」


アメジストの瞳を見据えて伝える。

否定されてもいい。

だから、ちゃんと私の気持ちを伝えたかった。