ラファエルがこんな風に声を荒げるのは初めてだった。

いつも落ち着いていて、柔らかな笑顔。

それでいて、悲しそうな瞳をしていて。

自分でもハッと我に返り罰の悪そうな顔をして口を開く。





「すまない……だが、これだけは信じてほしい」


体を震わせて離れた私に小さく謝り、躊躇いがちに手を伸ばす。

私に触れる寸前、触れるのに躊躇するそぶりを見せたが、ピタリと大きくて暖かい手が私の頬を包んだ。





「君がイヴに似ているからではない」


私に言い聞かせるようにゆっくりと。




「この琥珀色の穢れなき瞳も、黄金色の絹髪も、その柔らかな笑顔も、優しい内面も…全部君だ」


胸が詰まり、涙が零れ落ちる。

私がイヴだと言う証拠などないのに。

それでもラファエル様の言葉を信じたいと思う自分がいる。




だから……



「私は“イヴ”じゃないのに…」


気づけば口から不安が零れ落ちていた。

ラファエルは黙って私の言葉を聞く。






「ラファエル様に惹かれてはいけないと思うのに、心のどこかでは求めている」


ずっと…ずっとそうだった。

私に“イヴ”を重ねていると分かっていても、その気持ちは私の心の中でじわじわと膨らみ。

溢れ返ってしまいそうなほどまで大きくなった。

これ以上言ってはもう戻れないと分かっていても…