「“イヴ”って呼ばないで…」


滅茶苦茶なことを言っている。

私の名は確かにイヴであって、そう呼ばずになんと呼ぶのだ。

そんなこと言われても困るに決まってる。

当然、ラファエルも少し困ったような声を上げた。





「だが君は…」

「私は“イヴ”じゃない!」



部屋に大きく響く私の声。

こんなに大きな声で叫んだのは初めてだった。

けれどそんな威勢もはじめだけで、ラファエルの体に回された腕をゆっくりと解く。

そして、ラファエルがこちらを振り返ったのを感じながら再び口を開く。





「私は“イヴ”じゃないの…」


弱々しく俯きながら告げた言葉。






しかし―――――


「君はイヴだ」

「ッ……ちがう…」


何の根拠もなく私をイヴだと言うラファエルに悲しくなった。

まるで私がイヴでなければならないとでも言われているようで…





「ちがうもの…わたし…“イヴ”じゃない…ラファエル様…ちゃんと私を見て…」


ちゃんと見てと言っているくせに、イヴじゃないと言われるのが怖くて俯いたままそう言う。

ポタッと床に落ちる大粒の涙。




苦しい……


悲しい……