「天界まではルーカスを護衛につける」


ポンと頭に置かれた大きな手。

まるで最後みたいな言い方に胸の内が騒ぎ始める。





「無事に天界まで送り届けるから安心していい。君の幸せを祈っているよ…イヴ…」


頭に置かれた手がゆっくりと離れていく。




「ゃ……」


そう…これで終わり。

ラファエル様がこの部屋から出て行って扉が閉まったらもうお終い。

私はこのまま黙って天界へ帰ればいい。




「…っ……だ…」



“イヴ”からも解放されるし、ラナのいる天界に戻れる。

天界へ帰ることが賢い選択…

けど……






バッ…―――――



気づいた時にはベッドから駆け出し、その広い背に腕を回していた。





「ッ…イヴ?」


いきなり抱き着いてきた私に驚くラファエル。

咄嗟に私の腕をほどき振り返ろうとするが、ギュッと抱きしめる力を強くして抵抗する。




そして――――


「…たし……くない…」


ポツリと漏れた想いはとても小さくて。

ラファエルの背中に頭を埋めたまま口を開いたため、くぐもってしまった。