「聞こえなかったのか?もう一度言ってやるよ、別れよう」

「・・・意味分かんない、一度知らないヤツとキスしたぐらいで自分の彼女フるんだっ!!」

「っは、お前たった今なんつったか理解してんのか?」

「十分理解してるつもりですけどもっ!!?そっちこそ頭の方、おかしいんじゃないっ!?」

・・・呆れた。

もうコイツの顔も見たくない。
もうコイツの頬も触れたくない。
もうコイツの声も聴きたくない。
もうコイツと同じ空気を吸いたくない。
もうコイツと一緒に居たくない。


—————吐き気がする。


「消えろ」

「え、なに言ってん—————

「さんざん付き合わせといて、なんだその態度。消えろよ、今すぐ。俺の前から消えろ」

目も合わせたくない。

「・・・っ!!」

ダッ

南朋はクラスから走り出て行った、大恥かいたら一目散に逃げるのも無理ない。
急に緊張の糸が解けたのか、俺は床に座ってしまった。

「・・・ふぅ」

ポンッ

なにか俺の肩に感触が・・・手?

「・・・梓?」

なぜかそこには梓がいた、しかも微笑んでる。

「私も前々から南朋ちゃんが色々悪い噂作ってたのは知ってたんだ、うちのクラスでも口悪くて。でもこうして一馬くんがガツッ!!っと言ってくれたお陰であいつも思い知ったでしょっ。ありがとっ」

すっごい笑顔。
人がこんな大ゲンカした後だって言うのに梓、笑っている。
しかも、グッツポーズをしていた。

「ぇ・・・そんなに嬉しい?」

「いや、人の不幸を嬉しがるのもアレだけど・・・正直言うとそうかもっ」

・・・笑った。
人の悪口言うのはあまり良いものじゃあないけど、梓といると清々しい。
解放されるっていうか、なんか自分が鳥だとして籠からはなしてもらうみたいだ。
初めて空を自由に飛び回る、その感触。

これぞ梓マジックだと思った。