南朋、久々に聞いた名前だった。

『好きですっ、もし良かったら付き合って!』

『・・・はい』

ずっと付き合っていた間、俺は考えていた。
本当は梓が好きなのに、なぜ南朋の告白を受けてしまったのか。

もう―――――『元』という存在になったけど。


 小指心
  二人目の君


「あー美味しかったぁー、なかなか上手じゃん」

「うん、とくに唐揚げはお母さんよりっ!」

「さんきゅ」

俺は梓と飛鳥の食器を持って行った、二人は最近学校での事を話している。
洗っている間、俺はずっと昔のことを考えていた。

なんで今頃こっちに帰って来るんだ、なにしにココまで来る必要がある?
ただただ色んな理由が頭を駆け巡る。
気付いたらもう全ての食器が片付いていた。

あ、テーブル拭かないと。

「ねぇ一馬、ちょっと聞いて良い?」

「南朋のこと?」

「一馬ってエスパーだったっけ」

「スプーンねじ曲げれるけど」

「いや、それ力任せでしょ。とにかく話がズレたけど、思い出した?」

絶対聞かれると思った。

「んー・・・俺がフッた後、何も言わず勝手に海外に帰っちゃった元カノ」

「憶えてんじゃん、てか面白そー」

「いや、全然笑えない話だけど。聞く?」

「聞くに決まってるでしょ」

テーブルを拭き終わってキッチンに戻る、手を洗いながら二人に話した。

「今から話す物語は俺がまだ14歳だったころ、まだ梓に告白する前のお話」

―――――――――――

そう、この物語は俺がまだ14だったころ。
その時はまだ梓という子に気付いていなかった。

俺は学校の掃除当番で空をみながらほうきで床を掃除していた。

「おい一馬っ!!となりのクラスの女子がお前と話したいんだって!」

「それ誰?」

「聞いて驚くな、あの南朋さんだって!」

「・・・」

南朋はその頃学校では美人の帰国女子として結構有名だった。
人種はピュアな日本人だが故郷がフランスかどっかだった。

「えと、一馬くん。ちょっと話があるんだけど・・・いいかな」

「あぁ、暇だったし」

周りの男子達がヒューヒュー騒いでいてうるさかったのを鮮明に憶えている。