「ぇ、えと・・・ご飯、出来たけど・・・」

いやに沈黙と鼓動が加速する、これじゃあ一馬にも聞こえてしまう。
優しい一馬の吐息が軽く掛かった。

「うん、じゃあ下に行きますか」

そう言うと一馬はベッドから起きた、未だに私の肩には一馬の腕があるけど。
髪がふいに私の顔に当たった。
・・・シャンプーのにおい。

「そろそろ腕、どかして。階段下る時が危ないから」

本当はすごく嬉しいのに変なところで意地を張ってしまう、この性格どうにかなんないかな。

「えー、良いじゃん。なんか本当のカップルみたいで」

「なにいってんの、十分に本当のカップルじゃん」

一馬は続けた。

「いーや、あの小山・蓮ってヤツが出てきた途端、俺達なんか変わった」

「・・・?どこが」

「なんか・・・こう、みぞじゃあないけどさぁ。なんつーか、寂しい」

「えー?私はいつも通りのように感じるけど」

私は一馬を椅子に座らせキッチンに向かった。
鍋からミネストローネの良い香りがした、マグカップに注ぎながら私は聞く。

「蓮くんがどうかした?」

「いや、だからその事なんだけど・・・梓が言うその『蓮くん』ってどういう人物なわけ?」

あーそこから話さなきゃいけないのかー・・・。

「蓮くんは私の昔からの幼馴染みで、つい昨日帰国してきたんだって」

「前はどこに住んでたの?」

「わかんないけど、親の転勤で外国にいたんだって」

「へー・・・大変だな」

「だよね、はいどうぞ」

私は自分のお気に入りのマグカップに入れたミネストローネを渡した。

「おー、すごいね!本当に自分一人で作ったの?」

「おちょくってんのかい」

「べっつにー、褒めたんだけどな(笑顔)」