『ねーねー、なに隠してんの?』

様乃は私に聞く、いや聞かないで。
このことにはあまり触れないでほしい。

「・・・やっぱ教えない」

『えー、友達じゃーん。親友じゃーん、親じゃーん』

「いつから私の親になった?」

ていうか様乃が親なら人生気楽だろうなぁ・・・

『ふ、君が生まれてから・・・とでも言っておこうかな』

・・・前言撤回。

「様乃、今の台詞もしかして『炎の人』のパクり?」

『バレたか』

いやいやいや、バレたかって(笑)。

バレるもなにも、なんかクサいもん。
そんなの一発で分かるって。

「あ」

ふと時計を見ると、もう夜の七時で。
げ、お母さんに怒られる。

私は電話をしながら頑張って着替えた。
お団子が邪魔だ。

「ヤバ、ご飯の時間だわ」

『えー、なにそれ迷宮入りー?私そういうの弱いんだけど』

「知らないよ、じゃまた明日」

『教えてよー』

「いやだ、じゃね」



プチッ



早く行かないとご飯抜きにされる。

「梓ー、早く来なさーい!」

下から良いかおり、お母さんの声も響く。
決まって私はこう言い返す。

「今行ってるって!」

そうこうしたら、あの感情は消えていて。
いつも通り、普通の生活に戻っていた。

「姉ちゃあーん、早くしてよー」

「分かってるっての!」

家の階段を素早く下りていた。