「・・・」

なんで、梓。

「・・・一馬くん」

「っんだよ」

なんでこんな男なんだよ。

「・・・なんでもないです、じゃあ先に僕は―――――」

俺はコイツが無性に嫌いだ。



ガッ



俺は無意識の内に蓮の胸ぐらを掴んでいた。

「かず―――――」



「梓は渡さない」



心で叫んでも届かなく、

「・・・」

普通に叫んでも届かなく、

「容赦は無しだ」

願わぬ時に叫ぶと届いてくれる。

「・・・僕も譲る気はない」

蓮は急に目の色変えて言い返した。
なんだ、いつものヘナチョコな蓮じゃない。

「・・・」

俺は手の力を緩め蓮を離した。

・・・そういえば、梓。
あいつ、泣いていたじゃんか。


ガラガラッ


「ちょ、一馬くん!?」

俺は蓮よりも先に梓のところまで行こうと走った。
あんなヤツに良いところまで取られてたまるかよ・・・っ。

「梓っ!!」

しばらく走っていると、俺は梓の悲しそうな後ろ姿を見つけた。

「っ!!」

「逃げんなよっ・・・!」