昔、まだ君と私がちっちゃなちっちゃな子供だったころ。

小指一つで交わした長年の約束。

今でも忘れない。

あの感触がほら、またドキドキする。

君は今、どんな姿だろう。

そんな事しか考えられなくて、想っていて。

目の前にいる大切な人さえも色褪せてくる。

初恋なんてとっくに忘れていたとばかり。

でも・・・これはただの恋ではない気がして。

遠く遠く離れてしまった君。

―――――絶対に会えるという予感だけ胸にしまっておいた。


 小指心
  プロローグ


「梓、帰るよー」

「あ、ゴメンっ!今日は一馬と帰る予定なんだった」

「あーはいよ、明日は一緒で良い?」

「良いよーっ」

私は重いはずの足を軽く動かした、確か体育館だっけね。
長い廊下は階段に、遠い階段はお外に、綺麗なお外は―――大好きな人の元。

「かぁーずぅーまぁー!いるー?」

「あ、わり。もうすぐ終わるから待ってて」

「はーい」

私の彼氏はサッカー部のキャプテン(まるで少女漫画)。
月曜、水曜、それと金曜日は毎日部活の練習。
今日はなんだか早く終わったらしく、今あがったばかり。

「あ、ボール落ちたよ」

「お、取ってくれる?」

「ほいっ」

「っと、サンキュ」