「柚の方は、どうだった?」
「うん…。あたし、間違ってた。アキちゃんの気持ち、何にも理解出来てなかった。」
「………」
「だから、もう二度と夢を諦めない。約束したから、叶えてみせるよ」
「…そっか。彼女もきっと喜んでるよ。彼女は、柚の歌が何よりも好きだったみたいだから」
「え…?うん…」
あれ…?あたし、そこまで言ったっけ?
「まっすぐ、歩いていこう」
「…うん。」
暁くんの笑顔に、そんな疑問もすぐにしぼんでしまう。
指切りみたいに、きゅっとお互いの指を絡めた。
冷たくなった指先に、暁くんの体温が伝わる。
「暁くんの手、おっきいね」
「柚の手が小さいんだよ。力入れたら壊れそう」
「そんなことないよ。」
「そうかな」
「…あ、雪!」
空を見上げると、真っ黒な空からふわふわと雪が落ちてきていた。
「ほんとだね。寒いはずだよ」
暁くんも空を見上げて、ふわりと微笑んだ。
雪降る道を、一緒に並んで歩く。
あたしたちの歩いたあとには、サイズの違う足跡が2つ。
マンションの前に着いてしまったとき、あたしはなんとも言えない寂しさに包まれた。
前とは違う。
また会えるというのに、離れたくない。
そんなあたしに気付いたのか、暁くんはクスッと笑みを溢した。
「ねぇ、柚。あのぬいぐるみ、まだ持ってる?」
「うん。イルカもウサギも、ずっと宝ものだよ?」
「じゃあ、ゴタゴタがあって忘れてた“ご褒美”、今もらうね」
え…っ!!
今思い出したあたしは、ドキリと心臓が跳ねた。
ど、どうしよう…。
すっかり忘れてて、何も用意してない…!!
学校祭の時、あのぬいぐるみを取ってもらう代わりにご褒美をあげると約束してしまったと言うのに…っ