いつか来るかもしれない別れの時を思って、身体を抱え込んでいた時だった。
「…柚?バスタオルと着替えここに置いておくからね。上がったらリビングにおいで」
浴室の外から気遣わしげな暁くんの声がした。
続いて洗濯機を回してから静かに脱衣場を出た音がして、思わず緊張で固まってた身体からも力が抜ける。
いくら暁くんを信じてるからって、やっぱり男の人だから緊張してしまう。
暁くんにも、気を使わせちゃって申し訳ない。
イギリスから戻ったばかりで疲れてるだろうし、早く帰らなきゃ。
それからしばらく、すっかり温まったあたしはお風呂から上がった。
…そう言えば着替え、何だろう?
暁くんの服…とか?
想像して思わず頬が赤くなった。
よくマンガとかで見る、上だけのブカブカYシャツとかだったら…。
でも暁くん独り暮らしだし、女の子ものなんてないだろうし、暁くん大きいし…
ドキドキしながら脱衣場内を見渡す。
しかし、例の着替えはあたしの予想を大きく裏切って、ピンクの女の子らしいパジャマだった…。
「…あたたまった?」
そのパジャマを着て言われた通りリビングに行くと、暁くんは紅茶を飲んでのんびりしていた。
さっきと服が違うのは、あたしのせいで濡れてしまったからかもしれない。
“ありがとう”
手元に携帯もボードもないので、必要最低限の言葉だけを口パクで伝える。
「ううん。パジャマのサイズ、大丈夫そうだね。よかった」