「ごめんね、守ってあげられなくて。俺、肝心な時にいないね。」



暁くんは、悪くないのに。




ぎゅっと力強く抱き締めてくれて。


その温かさに、今はすがってしまいたかった。




ポロポロと、あとからあとから涙がこぼれ落ちてゆく。



頬にたくさんの筋を残して、暁くんの服を濡らしていった。




しわしわになるほど暁くんの服を握りしめて、唇を噛んで、嗚咽を堪えても止まらなくて。




そんなあたしを、暁くんはいつまでも黙って抱き締めていてくれた。




あたし、いつからこんなに泣き虫になっちゃったんだろう。



今まではこんなことくらいじゃ泣かなかった。


泣けなかった。




けれど、暁くんと出会ってからたくさん泣いてる。



暁くんという存在に、甘えてしまっているから?



暁くんや優輝ちゃんや、みんながいるから、だからあたしは安心して泣いちゃうんだ。




もう、一人じゃないから。






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「濡れた服、洗濯機の中に放り込んでおいて。柚がお風呂入ってる間に洗っちゃうから」




そう言って、暁くんは脱衣場から出ていった。




お言葉に甘えて、水気を吸ってすっかり重くなった服を洗濯機の中に入れて湯船につかる。




あったかい…。






冷めてた身体が、あっという間に暖まってゆく。




ダメだな、あたし。



辛いことがあったらすぐに暁くんに頼ってしまう癖がついちゃった。



暁くんは優しすぎるから、つい甘えてしまう。



甘えないようにしなきゃ。



暁くんがイギリスに帰ってしまった時、辛くなっちゃうもん。