何を考えているのか、全くわからない。




久しぶりに会ったと思ったら…。




何しに帰ってきたの?





一度部屋に行き、制服からラフなTシャツとショートパンツに着替え、遅めの昼食を取ろうともう一度部屋に戻った時だった。




「…柚姫、ちょうどいい。話があるからここに座りなさい。」



…話?



なんの話が全く見当もつかず、大人しくそばの椅子に腰を下ろす。




灰皿で煙草を押し消すと、ふーと息をついて重苦しく口を開いた。





…そのお父さんの口から出てきた言葉は、あたしの予想すら出来ないことだった。







「…父さんな、再婚しようと思うんだ。」







…え?



一瞬、頭が真っ白になった。





「相手は、会社の部下で…。今、妊娠5ヶ月だ。」




視界が、暗転したようだった。



じゃあお父さんは、10ヶ月の間ずっとその人といたの?



あたしを、ひとりぼっちにして?




「それでな、柚姫。彼女と彼女との子供の為にも、なるべく広い家で暮らしたいんだ。わかるだろ?」



ちょっと待ってよ、なにそれ…?



「お前ももう大人だし、独り暮らししてみないか?マンションは俺がいい物件を探しておくから」




ひど…




それって、あたしが邪魔ってことだよね?



この家が欲しいけど、ここにいるあたしは邪魔だから追い出す気なんだ。




…こういうの、父親っていえるの?




滑稽さに、思わず頬に涙が伝った。



「柚姫、すまない…。」




そんな言葉、聞きたくない。


聞きたくないよ…。





暁くん…。





耐えきれなくなって、とうとうあたしは家を飛び出した。







***********





走って、走って。



どのくらい走っていたのか、もうわからない。



ただ胸が苦しくて、重くて。



まるで鉛にでもなってしまったかのようだった。




それは、走ったから?



それとも、父親に捨てられたから?