着替え終わったあたしは、バッグを持ち出口へと向かう。
「陽菜…っ!!」
楓にそれを阻止された。
瞬時にバスローブを羽織り、あたしを包み込む彼。
強く抱きしめられた身体。
また温かさを取り戻していく身体。
鼻腔をくすぐる大人の香りに、
腹立たしいほどドキドキする。
ほんのり香る煙草の香り。
「楓…離して」
震える声。
泣くな、私……
楓の優しさが今は、
すっごく苦しいだけだよ。
そんなことされたら……
また戻れなくなるよ。
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