「悠!」


屋上の扉を開けたら、やっぱりいた。


「美那」


奥にいる悠のもとへ歩く。


悠もあたしに近付いてくる。


その嬉しそうな顔を、拳で殴り付けた。


「あ…相変わらずの威力だな……美那」


悠が頬を抑えて、後ろによろめく。


「あたしが許すと思った?まじで有り得ない。なんであたしに相談しなかったわけ?あたし、そんなに頼りない?」

「おまえ、知ってたのか……」

「全部聞いた。あたしを無視するのも許せなかったけど、あたしに黙って1人で苦しんでたのはもっと許せない!」

「…………」

「あたしに相談してくれたら、別れずに済んだかもしれないのに。別れたとしても、悠を責めなかったよ」

「……ごめん」

「……優しすぎんだよ。悠……」


後から後から涙が溢れて止まらない。


もう悠の前では泣かないって決めたのに。


「……美那」


悠の手があたしの背中に回って、引き寄せる。


抱き締められるのも……初めてだ。


「美那に迷惑をかけたくなかったから。1人で抱えた方がいいかなって……」


押しつけられた胸から鼓動を感じる。


不覚にも顔が熱くなってきた……。



「あとは美那が関わると絶対血を見ると思ってな。俺美那が傷つくのみたくねえもん」

「……坂本さんといてこんなことも覚えたか……」

「え?」