「本当に、君は
何も覚えていないようだね」
「それが記憶喪失というものらしいからね」
「しかし君は本当に僕とよく似ている」
「しかし僕は君と同じではないんだよ」
君に何があったのかを
僕が覚えていればいいのに。と彼は言った。
空は晴れていて、
気持ちのよさそうな風が吹いている。
カップに入った液体は美味しい。
今日も昨日と変わらない。
これが日常というものなのだろうか。
平凡で何も無い、
平和で何も無い。
僕は僕であって、
それ以上でもそれ以下でもない。
僕が僕であった日常。
それも、こんな風だったんだろうか。
終