公園のベンチには生憎先客がいたため、私たちはブランコに座った。

「俺の好きな人って、幼馴染みなんだ」

井上くんはギーギーと音を立てながらブランコを漕いでいる。

「…………」

私は隣でただ黙ってそれを見ていた。

「小さい頃からずっと好きで、でも"幼馴染み"の関係が壊れてしまうのが怖くて言えなくて……。そしたらあいつ、彼氏ができたとか言い出して」

井上くんは俯いて、ブランコを漕ぐのをやめた。

「だから自分も彼女を作ろうと思った?」

「……そうだよ」

私は井上くんから顔を背けて前を見据えた。

「知ってる?井上くんって結構人気あるんだよ?密かに狙ってる子だっていたし。別に……」


『私じゃなくてもよかったんじゃない?』


途中まで言いかけて止めた。


『どうして私を選んだの?』


ずっと聞きたかったその一言は聞けなかった。