「私、幸せよ」

彼女は僕の腕を掴んで引き寄せた。

僕は彼女に抱き締められた。

「君に逢えたから。ずっと逢いたかった……」

「……ッ!!」

突然何か強い力に吸い寄せられるかのような感覚を感じた。

抱き締められる力と、吸い寄せられる力は同等で、僕は彼女に掴まることで辛うじてここに留まっていた。

「…愛してる」

彼女の瞳から大粒の涙が零れた。

吸い寄せられる力が強さを増していく。

僕がここに留まるのを赦さないとでもいうように。

「僕は…」

「君に私の未来をあげる」

彼女は僕の言葉を遮った。

そして笑ったんだ。

「だから、生きて?」








僕の視界は奪われた。

目に見えるのは暗闇で、もう何も見えない。

僕は静かに目を閉じた。

その中で、彼女が僕の名前を呼ぶのを聞いた。








次に目を開けると、見覚えのある顔が並んでいた。

「ケンちゃんッ!!」

涙で顔をぐしゃぐしゃにしている幼馴染みのマユミ。

「賢輔!!」

いつもより険しい顔の父親。



そうだ、僕は死にかけていたんだ。



でも、彼女が助けてくれた。