「貴女は、幸せですか?」

何故そんなことを聞いたのかわからない。

でも、聞かなきゃいけないような気がしたんだ。

「私、もうすぐ結婚するって言ったよね」

「……それは“イエス”ってことですか?それとも“ノー”?」

彼女は微笑むだけで、答えなかった。

「じゃあ逆に聞くけど、君は幸せ?」

「え…?…僕は……」

「ふふ。冗談」

彼女は僕を見つめた。

そして僕の頬に触れた。

「君は“覚えてない”んだよね。ここに来る前のこと」

「……どうして……」

「私、超能力が使えるの」

彼女は悪戯に微笑んだ。

「冗談はやめてください」

「冗談じゃないよ」

彼女の顔は真剣だ。

「君の未来が見える。かけがえのない人たちに囲まれて、笑っている君」

「貴女は、一体……」

僕の言葉を遮り、彼女は立ち上がった。

「もう帰る時間よ」

気がつくと暖かな陽射しは夕陽に変わっていた。

オレンジ色が強くて彼女の顔が見えない。

「ここは君のいる世界じゃない。君は自分の世界に戻らなきゃ」

僕は何も言えなかった。

いや、言わなかった。



その時彼女が振り向いた。