「特別な感情を抱いてしまった。だけど、やっぱりこの気持ちは・・・・・・あかんって思う。あかんと言うか、俺はもっと現実を見るべきやった。俺はもう30後半で、おっさんやん。大越は高校生や。俺が好きになる相手じゃない」
ふたつの感情がぐちゃぐちゃになってた。
特別な感情を抱いてくれていたことに、感激しちゃってて・・・・・・
だけど、未来はない。
悲しいけど、嬉しくて、嬉しいのに・・・・・・寂しくて涙が出る。
何も言えんよ。
私は子供過ぎて、何も言えん・・・・・・
「私は、緑川先生が好きです」
それしか、言われへんよ。
泣いたらあかん。
泣いたら困らせるだけや。
必死で我慢した涙がのどの奥で苦しそうに居場所を失ってる。
「ありがとう。俺も・・・・・・生徒として、お前が大好きや。それ以上言えんけど、俺の気持ちはちゃんと届いたと思ってる」
「はい・・・・・・ 私も緑川先生と一緒にいるのが楽しくて、ほんまに幸せで、めっちゃ気が合うなって思ってた。なんで、同じ高校生として出会えんかったんやろう・・・・・・」
我慢してた涙がポロっと一粒落ちた。
「泣くなぁ・・・・・・俺の決心が揺らぐやろぉが」
ポンポンと、私の頭に手を乗せた緑川先生は、切ない表情で私をじっと見つめた。
「泣きません」
そう言いながらも、涙がまた一粒・・・・・・
また一粒・・・・・・
「ごめんなさい」
「いや。ほんまにごめん。俺が悪かった。お前の気持ち考えたら、ここまで仲良くなるんじゃなかった。お前を選んであげられへんなら、最初から近付くべきじゃなかった・・・・・・」
選んでよ。
私を選んでよ・・・・・・
心の中ではそう叫んでた。
でも、物わかりがいい生徒を演じる。
「楽しかったから・・・・・・それだけで幸せでした」