車の中では陽気な音楽がかかってた。






「2ヶ月間、ボーっと過ごす気なん?ちゃうやろ?みんなが練習しやすいようにフォローするのがお前の仕事や。それと、チーム全員の弱点をまとめろ」





黒岩は前を見たまま静かにそう言って、黙ってる私の方をチラッと見た。





「どうしたんや?」





「私にそんなことできるんかな」





「お前にしかできひんと思って、俺は言ってるんやけど」





黒岩は、車を停めた。






「大越の弱点わかるか?」



「弱点?私にはないように見えるけど」



「それはお前が自分のサッカーに必死で他のメンバーのことを見てない証拠や。これから2ヶ月、お前はみんなのことをじっくり観察して、それぞれの長所も弱点も見極めることができる。すごい大事な2ヶ月になると思わんか?」




不思議。


黒岩にそう言われたらものすごく貴重な2ヶ月のように思える。






「大越は、右からのパスを受けるのが苦手や。本人は気付いてるはずや」




そんなこと考えたこともなかった。


2ヶ月の間に、チームにプラスになる働きができるとしたら・・・・・・





「うん!!頑張る!!」