ピーーーーーーーー!
ド緊張や。
ベンチで見守る黒岩の姿が超かっこよくて、ドキドキする。
ひざの上に両肘を乗せて、手を顔の前で組んでる。
こんな顔していつもサッカーの試合を見てるんやな。
まだまだ知らん顔があるんや、黒岩には。
「瑠美、いけ!!」
中央でボールを奪った瑠美がドリブルをする。
ずば抜けてドリブルのセンスがある瑠美は、緑川からできるだけドリブルで突破しろと言われてた。
私はディフェンダー。
守り。
でも、大事なポジションらしい。
黒岩が言ってた。
縁の下の力持ちって。
それからはこのポジションが好きになった。
シュートのセンスは、姫華ちゃんがやっぱり一番。
あのかわいい顔で、バシバシゴールを決めるねんからたまらんわな。
人気度はどんどん上がってる。
「いけ!!姫華ちゃん!」
瑠美のパスが姫華ちゃんに通って、シュート!!
惜しい!
相手のゴールキーパーもなかなかやる。
えっ!!
っ!!
青山颯!!!!
変装してるつもり?
余計目立ってるし!!
どこから見ても、お忍びデートの芸能人ですよ??
でっかいグラサンに、ニット帽。
革ジャン。
この時期にニット帽?
この時期に革ジャン?
サッカーの応援やでぇ??
姫華ちゃんの応援に来たんや。
絶対にそうや。
サッカー部全体を応援してくれてるけど、やっぱり姫華ちゃんには特別な想いがありそうに見える。
「萌、よそ見しいなや」
先輩に声をかけられて、私は試合に集中する。
絶対勝つ。
勝って、もっともっといいチームにしたい。
でもやっぱり
褒められたい。
黒岩に。
“よう頑張ったな”って言われたいねん。