「なぁ、萌美。緑川先生の彼女って幸せやったやろうな」
ボソっとつぶやいた瑠美。
夕焼け空を眺めながら、止まりそうなスピードで歩く。
「せやな。大事にされとったんやな」
「でも、今は別れてるってことやんな?」
瑠美は真剣な表情でそう言って、ため息をついた。
「結婚してたのって、その彼女なんかな。それやとしたら・・・・・・なんかかわいそう」
「せやな。緑川も彼女もかわいそうや」
瑠美と私は空を見上げて、深呼吸をした。
「大人にならなわからんことがいっぱいあるんやろうな」
「そうやな。そんなに好きで大事にしててもいつか別れが来る」
私は、早くて良かったんかもしれん。
もっともっと黒岩を知って、黒岩に愛されてから別れてたら、生きていかれへんくらいに落ち込んでると思う。
「緑川先生を好きでおっても、未来はないんよな」
「そんなん決まってへんやん」
「決まってるよ。萌美や姫華ちゃんには可能性あるけど、私の恋は絶対実らへん」
何も言えんかった。
何を言っても嘘くさく聞こえる気がした。
恋って、切ない。
嬉しいし、悲しいし、辛いし、面白いし、
忙しいな、恋は。