「あのシュートはミラクルや~」
「ほんまや、姫華ちゃん最高~」
決勝点を入れたのは姫華ちゃんやった。
サッカーの才能があるみたい。
「えへへ」
とかわいく笑う姫華ちゃんに、先輩達もメロメロで。
「姫華~、ジュースおごったるわ」
なんてこともある。
大量におった体験入部生やけど、緑川の超厳しい練習のおかげで16人まで減った。
その中でも毎日練習に出てる熱心な部員は10人くらい。
いい感じの人数。
「コーチもこっちおいでや」
3年の先輩で、黒岩を狙ってるっぽい人が1人だけおる。
でも、その人も彼氏おるみたいやし、本気じゃなさそう。
やっぱり、部員の中でライバルがおるのは嫌やから、良かった。
まだしばらくは、黒岩のことを忘れるのは無理やから。
「あ、大越。これ、緑川先生に渡してもらえるか?明日までに」
黒岩は、瑠美の気持ちを知ってる。
だからかな。
瑠美と緑川の接点を作ってくれるから、私としてはめっちゃ嬉しい。
あれから、一回も黒岩とは話してない。
個人的には。
部活中の会話だけ。
黒岩は、何もなかったように接してくるから、私も何もなかったように接してる。
きっとそれが黒岩なりの優しさやと思うから。