「待ったか?お前、寝とんか?」
ちょっとしんみりしてたところに、緑川先生がやってきた。
「寝てません」
「そうか。そんで、なんで俺に怒ってんのや?」
緑川先生はジャージのポケットからハンカチを出して、顔の汗を拭いた。
いやいやいやいや。
普通、タオルやろ?
なんでハンカチ?
と思ったけど、黙っとこ。
「黒岩先生、クビにしたんですか?」
「クビやなんて。そんなんするわけないやろ。それにまだ決定したわけちゃうねん。黒岩先生といろいろ話したんやけど、黒岩先生の方から辞退しましょうかと言い出したんやで」
ちょっと癖のある前髪がかわいい。
って!!
そんなんどーでもええねん。
「理由は何ですか?もしかして、萌美?」
「大越は、知ってるんやな?」
私の前の席に座って、大きなため息をついた緑川。
っ!!
息、かかったから!!
やめてよ。
言いたいこと言えんくなるやろ。
「何か問題あるんですか?黒岩先生と萌美は別に付き合ってるわけちゃうし、練習中は萌美だってコーチとしてちゃんと見てる」
「まあ、そうやな。俺も問題はないと思ってた。ただ・・・・・・黒岩先生の方はそうも行かんらしい。やっぱり、特別な目で見てしまうんやろう。人間やからそれはしゃーないと思う」
緑川先生からそんな言葉を聞くと、緑川先生にもそういう人がおるんかなって想像しちゃう。