口のうまい男やったらしい。



まさか二股かけられてるなんて思いもせんかったってお母さんは言った。





「二股」



嫌な響きや。



どっちにもええ顔して、どっちにも嘘ついてるってことやろ。



「年上の美人の彼女がおった。結婚の約束もしとってん」


「まじで?」





それはひどすぎる。


教師不信になったのはそういう過去があったから。




「しかも、彼女からの電話で真相がわかってん」



「何、それ。ドラマみた~い」



「何喜んでんのよ。かわいそうやろ?私」




確かに。


彼女からの電話で、ドラマさながらの“あなた、どういうつもりで彼と付き合ってるの?”みたいなこと言われて。






それで、THE ENDってわけか。





「黒岩先生っぽいタイプ。母親にも人気あったし、生徒にも人気あって、かっこ良かったんよな」



お母さんの横顔を見ていると、すっかり高校時代にタイムスリップしてるように思えた。