――グッ


『は?』


あたしの顔の横あたりに、自分の手首が見えた。

そして、動かなかった。


麻生があたしの手首を壁に押しつけながら握ってたからだ…。


『ねぇ、痛いんだけど!』


麻生の力は強くて、爪があたしの手首にくいこんでた。



「なんでみんな一夜一夜って…」


やっとしゃべった麻生。

なんか……ヤバい。


正気、失ってる…?


『ちょ、離して!』


「なんでみんな比べるんだよ…!!」


『意味わかんない!!離して!!』


さすがに身の危険を感じた。


でも、いくら手首をひねったり、押し返そうとしても、びくともしなかった。


痛い、痛い…!!

なんで離れないの!?


「………アイツのなんて、めちゃくちゃにすればいいんだ…」


麻生の言葉と共に、力が強くなった。


そして、麻生の顔が近づいてくる。


痛い、怖い、怖い、怖い―――


このままじゃ何されるか分かんない。

逃げなきゃ、逃げないと…


必死に手首を動かしてるのに、さっきより動かなくなった。

むしろ、動かすと痛い…


麻生とあたしの距離が、もうすぐゼロになる。