『なんで助けたの』
「そりゃ彼女の危険は彼氏が助けないと」
麻生はやっぱり表情を変えない。
あたしの質問に答えていく。
『そんなの形だけじゃん。あたしの気持ちはアンタのところには無い』
――麻生がちょっとだけ、
ムッとした気がした。
でもそれはほんの一瞬だった。
また元通りの表情に戻る。
「いつか砂希ちゃんに好きになってもらうよ」
『それはない。だけど、助けてくれたことには感謝する』
――助けてくれたことだけ、ね。
「どういたしまして」
あたしが不機嫌なのにも関わらず、麻生は嬉しそうに笑った。
でも――
『アンタには考える力が足りない』
「……は?」
麻生は目を丸くした。
『助けてくれたことは感謝してる。だけど、あたしはあの程度ならまだ大丈夫だった』
「感謝してるのに、それ言うの?」
麻生はまたいつもの、あたしの嫌いな笑顔に戻った。
それは本当の笑顔じゃなさそうだけど。
『呼び出しの原因がアンタなの、知ってるでしょ?』
「うん。昨日クラスで言ったしね」
目の前のコイツが、ずる賢いのか、バカなのか分からなくなった。