梨沙の顔が急にこわばった。


だけど、すぐに泣きそうな顔になった。



「あたしは砂希のこと心配してるのに!!」


『…余計なお世話だよ』


もっと優しい言い方できたらよかったのに…。



「もう知らないっ!砂希のバカ!」


梨沙は、とうとう涙をこぼした。

けど、それを見られないように叫んでから教室を出て行った。




『……これで満足?』


シーンとした教室にあたしの声が響いた。



「…バレてた?」



教壇からひょこっと顔を出したのは、麻生静夜。


『バレバレ』


「その割には、梨沙ちゃんに何か言おうとしてたよね?」


『何か、ってなに?』


コイツの笑い方、あたしは大っきらい。


「ま、いいけど。砂希ちゃんは賢いから、信じてるよ」


『あっそ』


お前に賢いって言われても嬉しくない。


そう言ってやろうかと思ったけど、面倒くさいことになりそうだから止めた。



あたしはそのまま教室を出た。



昨日の呼び出しと、今日の呼び出し。

つくづく女子ってわからない。


告白する勇気はないけど、あたしをシメることはできる。

どうせムリ、って諦めても、ちょっと仲のよかったあたしに嫉妬する。

呼びだして、怒って、罵って、それでちょっと勝った気になってる。



なんか、惨めだな…。