「あはは。誰でしょうーか?」


麻生は、一瞬あたしを見てニヤッと笑った。


その顔が、妙に腹立たしかった。


だけど、あたしはアイツに従うことしかできない。


「教えろって~」
「減るもんじゃないんだしいいだろ!?」

「静夜くん!」
「誰なの!?」


「え~言っていいのかなぁ?」


一言一言がいちいちムカつく。

挑発してんの?


「いいから早く!!」

と、静夜の周りが急かす。


1限目は生物。

押しに弱い小さな女教師。


だから、一生懸命「静かに!」って言っても、誰にも届かない。



しょうがないから、助けてあげる。


結局、バレるのは時間の問題。

だったら――…。


ガタッ


『もったいぶるその態度、キモイ。言っていいよ別に』


突然立ち上がって言ったあたし。

教室はシーンとした。


梨沙も、朝日も、一夜も、みんなが驚いてた。

クラスの注目を、あたし1人が浴びた。


悪口を言ったようにも取れるけど、彼女があたしであることも言っている今の一言。



あたしはもう騒がしいのには疲れた。

だから、この後のクラスは見ないで帰ることにするよ。


あたしは机の横にかけてあるカバンをもって、先生の所まで歩いた。


『先生』

「あ、ハイ!なに?」


いきなり話しかけられたせいか、先生はあたしに驚いた。


『あたしさっき保健室に行って熱測ったら37度8分あったので、今日は早いですが早退します』

「あ…、そう。お大事に」


熱なんて嘘。

あたしは早足で教室を出た。